ウインドサーフィンの原点『初代ウインドサーファー艇』について

Image from The Early Days of Windsurfing
現在のウインドサーフィンはショートボードを中心に語られることが多く、プレーニングやジャイブ、スピードなどを追求することが主な楽しみ方とされています。では昔はどうだったのか。どんなボードでどんな楽しみ方をしていたのでしょう?
「楽しみ方」は「形状」に表れます。自動車などと同じように、形を見れば楽しみ方(乗り方)がわかるのです。そこで今回は1967年にその原型が発明され、1970年に初めてのウインドサーフボードとして量産が開始された『初代ウインドサーファー艇』に焦点を当て、その特徴や楽しみ方についてお話しします。
|| 長くて重いボードだからこそ
『初代ウインドサーファー艇』は、サーフボードの『グライダー』と同じ属性にあるボードです。『グライダー』の主な特徴は10~12フィート(≒305~366cm)と長くて重いことですが、そのグライダーをベースにしたボードにセイルをつけて、バランス良く走れるようにしたのが『初代ウインドサーファー艇』ということになります。
▼初代ウインドサーファー艇の特徴
・長い(365cm、12ft)
・細い(最大幅65cm)
・重い(約20kg)
・ワイデストポイント(最大幅)がテイル寄り
・テイルはスカッシュ(幅が広く角ばっている)
・ユニバーサル・ジョイントを初めて搭載

Windsurfer First-Generation=365cm/65cm/20kg/Volume unknown
『初代ウインドサーファー艇』が長く細身で重い作りになっているのは、接水面をキープして海面を滑らかに走り続けるためです。そのぶん小回りは利かなくなるので、回転性を補うためにワイデストポイントがテイルよりに設定されています。
角のはっきりした幅広のスカッシュテイルは海のパワーをボードのパワーに変換しやすくするための形状で、これにより安定性が向上します。またテイルの幅が広いとボードのアウトラインが直線的になるので、そのぶん直進安定性も向上します。つまりボードのふらつきが少なく、真っ直ぐに走りやすい。誰でも乗りやすいボードになっているというわけです。
前の記事(ウインドサーフィンの歴史①)でも書きましたが『初代ウインドサーファー艇』は、ユニバーサル・ジョイントを初めて搭載したボードでもあります。この360度回転式のユニバーサル・ジョイントによって、セイルを自由に動かすことが可能になり、推進力や進行方向を自在にコントロールできるようになりました。
『初代ウインドサーファー艇』は、プレーニングやジャイブがキレるシャープで軽い作りの今のボードとは異なり、風の力で海上を滑るように走ることを最優先にデザインしたボードである、ということです。
では多くの点で現在主流のショートボードやウェイブボートと異なる『初代ウインドサーファー艇』で、当時のウインドサーファーたちは、どのようにウインドサーフィンを楽しんでいたのでしょう?
|| ウインド&サーフィン、風と海と人がつながるために
『初代ウインドサーファー艇』は、風の力によってウインドサーフィンに特有の『グライド感』を楽しむために作られたと考えられています。グライド感? それを説明するのは難しいのですが、例えばグライダーが空を飛ぶように、海面をするする滑走するときに得られる感覚のことです(グライドとは? の記事参照)。全長を長くすることで直進安定性を高め、細くすることで走行中の抵抗を小さくし、重みを持たせることで(重量と速度の関係から)加速しやすく失速しにくいボードを完成させたということです。
海に出てセイルに少し風を入れれば、ボードは海面を舐めるように走り始めます。その段階でグライドが始まり、そのときの気持ちよさを長く維持できるのが初代ウインドサーファー艇の特徴です。その性能を引き出すのは難しいことではありません。誰でも乗れて、友人や家族とも楽しめるからこそ、1970年代後半から’80年代にかけて、ウインドサーフィンは一大ブームとなりました。
『初代ウインドサーファー艇』は、風をダイレクトに感じ、その力によって海面を滑るように走る気持ちよさや楽しさ(非日常性)を感じるための道具として、多くの人たちに受け入れられたのです。それが今に続くウインドサーフィンの根源であると言えます。
現在ではプレーニングやジャンプ、ウェイブなど、アクション系のショートボードがウインドサーフィンの中心にあるために、スピード性、俊敏性に劣るロングボードはあまり多くは見かけません。でも『初代ウインドサーファー艇』から始まったロングボードは今もあり、微風でも走り、初心者でも乗りやすく、何よりグライドすることで風で走る感覚をダイレクトに感じられる道具として、必要不可欠なアイテムとなっています。機会があれば(できれば機会を作って)一度乗ってみてください。生身で風を感じて、海を感じる、まさにウインドサーフィンを体感できるはずです。

現在の『Windsurfer LT』=全長366cm/最大幅74cm/重量15kg/容積227ℓ ⒸNaish_frankiebees

この記事へのコメントはありません。