
『ウインドサーフィンの走りだし』について
インストラクション裏話_1 昔『ウインドサーフィンの走りだし』のレッスンを行う際には「ボードをアビーム(風に対して直角あたり)に向けて、5ステップ(あるいは3ステップ)で」という手順を採用していた。でもこの方法には、横揺れに弱い、風下に流されやすい、動作が大きくなって難しい、などのデメリットがあることから、2000年ぐらいからは「クローズ(やや風上)方向へと走り出していきましょう」というように声をかけるようになった。実際に日々のインストラクションを行うなかで、そのほうが良いと判断するようになったからだ。
その当時はまだはっきりとはわかっていなかったのだが、この方法のほうがベターだと感じるようになった理由には、ボードの変化が大きくかかわっていたと思う。その頃、レッスンに使用するボードが、急速に短く、幅広のそれに変わっていったのだ。これによりボードの上でバランスをとることが非常に容易になり、レッスンは数段簡単になった。
昔は半日で10m、一日かけて練習して25mぐらいの距離を一往復できれば御の字だったものが、初回からボードの上でバランスが取れない人や走り出しができない人はほぼいなくなり、一度も落ちずに一往復走れるようになる人が数多く現れるようになった。
だが、その新式のチ×デ×ボードはその簡単さの代償に、乗り手から水面を滑る感覚を根こそぎ奪ってしまった。アビームで走りだしても、セイルに風を入れると同時に感じる滑りだしや、音もなく水面を走る感触など、何も感じられなくしてしまったのだ。だからインストラクションも変わったのだと思う。
|| 海や風を感じて動ける人に
そして今、僕たちは簡単さよりも、ウインドサーフィンならではの素晴らしい体験を重視するようになった。せっかく海に来てくれた人たちにそれを感じてもらうために、長くて幅の狭いボードでレッスンを行っている。
これは正直難しい。キャリアの長いインストラクターが「いったい誰が乗れるんですか?」と言うくらい。近年の初心者用ショートボードに乗ってプレーニングできる人が手こずるくらいに。だから1ラウンドで10mも直進できるようになれば十分、ということになる。
でもそれで終わり、というわけではない。『(長くて幅の狭い)ロング・ナローボード』に乗れば、水面を滑る感触が全身を走ることになる。さらにウインドサーフィンの本当の乗り方を覚えることができる。最初の10回くらいまでは進歩が遅いと感じるかもしれないけれど、あるとこから急激に上達するようになる。そのメリットは大きく、長いスパンでウインドサーフィンと付き合える可能性も高くなる。
そんなわけで、最近の走り出しはアビームからの3ステップにしている。その方が海や風を感じやすく、躊躇ぜずに動く習慣が身につきやすいと思うから。
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